《 花マップ紀行 》
》》》 花マップ紀行「カタクリ」櫛形山
櫛形山脈は"日本一の小さい山脈"として知られている。天然記念物に指定されている大峰山の山桜はつとに名高いが、白鳥山のヒメシヤガ、櫛形山のブナ林、ヒメサユリそしてカタクリと花の見所も多い。
 
日本一小さい山脈に一咲くカタクリ
飯豊連峰に源を発した加治川を新発田市で渡ると、右手に櫛形山脈の山並みが近づく。次の加治川村は「北緯38度線」の通る村として知られている。
JR利用の場合は羽越本線金塚駅で下車する。中条町に向かってやや北上し、信号機を右折して小中山集落を抜けると貝屋集落に入る。貝屋集落を過ぎたあたりから右折するのが大沢林道で、集落から少し離れて一軒家があり、山野草愛好家の御夫婦がいるので話を聞くのもよいだろう。しかし、道は狭くしかも駐車場所がないので迷惑にならないよう注意を要する。
すぐ先の分岐点に法印ノ滝、櫛形山の案内板があるが、小さいので見落とさないようにして直進する。車道はこの先の堰堤までついているが、道が悪いため車は捨てて歩こう。早くも小沢の辺りはホクリクネコノメソウやチャルメルソウで埋めつくされ、アズマシロカネソウも優しげな姿で迎えてくれる。堰堤の脇道から入るのが山道で、めったに人と会わない。やがてスギとヒノキの植林地を過ぎると、大木の堂々としたケヤキ林が現れ目をみはる。大滝、法印ノ滝を脚下で越すと一ノ沢の花の核心部が始まる。春の登山道は落葉で滑りやすく、足元を確かめてから左右の斜面に目を移そう。オオバキスミレとカタクリの群落が谷を埋めている。沢を離れると雷光形の道となるが、相変らずカタクリの道が続く。妖艶な下部の群落に対し、雪消えの上部はまだ幼い蕾のカタクリが見られるだろう。
粟粒を蒔いたようなアブラチャンや真紅のユキツバキの中を急登すると、やがて大峰山から櫛形山に続く稜線上に着く。右折すれば大峰山で、ログハウスの休憩展望舎「チェリーヒュッテ大峰」がある。左折すれば法印ノ峰で櫛形山を経て縦走路に接続する。櫛形山は櫛形山脈の最高峰で、5月上旬の頂稜ブナ林の芽吹きは見事で一度は訪れたい。下山は大沢尾根の関沢そして飯角コースが近く、縦走すれば羽黒、石切り山、白鳥山コースと豊富であるが少し長い。いずれも下山路はJR中条駅である。
》》》 花マップ紀行「タカネマツムシソウ」飯豊連峰
飯豊連峰は磐梯.朝日国立公園に属し、新潟.山形.福島の3県にまたがっている。盛夏でも残る豊富な雪田は大規模な高山植物群落を育み、たおやかな女性的な起伏と、行けどもつきぬ花に彩られた山旅は飯豊連峰の最大の魅力。なかでもタカネマツムシソウは日本随一の群落がある。
 
雄大な石転び沢の大雪渓が見られる梶川峰コ−スを行く
JR米坂線小国駅で下車する。登山シ−ズン中(7/20〜8/20まで)は登山口である、飯豊山荘前までJRバス東北が運行しているので時間を確かめておく。
飯豊山荘の駐車場から湯ノ沢を渡ると、すぐ右が梶川尾根コ−スの登山口である。 湯沢峰まで急登の連続となるが、途中からブナの大木が現れると滝見場は近い。
滝見場は梅花皮ノ滝と石転び沢の大雪渓が見渡せる屈指の展望地である。 大雪渓は緑の大海を昇る白竜のごとく、紺碧の空に舞昇る。その圧倒的な迫力に飯豊連峰の深さと大きさを実感できよう。五郎清水は清冽な水場で、やがて風雪に耐えたダケカンバの白い樹林帶を越えると梶川峰である。もうそこは飯豊特有の笹原と草原に変わり、イイデリンドウやイワショウブの咲く穏やかな登りとなる。
扇ノ地紙で縦走路に接続するが、扇状に残った雪渓端にはチングルマやアオノツガザクラが多い。コ−スを左にとり今日の宿泊地、門内小屋に向かう。色鮮やかなヒメサユリやキンレイカが今日の疲れをいやしてくれるだろう。
翌日は南下し北股岳をめざす。途中のギルダ原には一面のお花畑が広がっている。礫地には6月中旬からミヤマキンバイやハクサンイチゲ、ヒナウスユキソウが、7月中頃からマルバコゴメグサ、タカネマツムシソウと咲き変わる。
草原地にはニッコウキスゲやタカネツリガネニンジン、ヨツバシオガマそしてシロウマアサツキ、ハクサンチドリが咲き競う。
さらに北股岳を越えた梅花皮小屋付近は十文字鞍部と呼ばれ、主峰大日岳を背景にしてチシマギキョウ、ハクサンフウロ、クルマユリ、イワオオギ、エゾイブキトラノオなどが咲く。また、石転び雪渓側にはオタカラコウ、シナノキンバイ、ミヤマトリカブト、ミヤマシシウド、コバイケイソウなど草丈の高い植物が多く種類も豊富だ。
下山は往路を戻ることを原則とするが、天候が良く見通しの利く場合は、雄大な石転び沢の大雪渓を下れば味わい深い山行となろう。ただし、アイゼンは必ず携行すること。天候が悪くガスっている場合は、落石やクレバスに落ちる危険があるので、絶対に雪渓を下ってはならない。 なお、石転び沢コ−スを下山した場合、飯豊山荘まで約6時間の行程である。
》》》 花マップ紀行「ミズバショウ」中条町
日本海側の北海道や本州中部以北の山岳地帶から亜高山帯に群生するミズバショウが、標高わずか10メートル、しかも日本海から2KMと離れぬ新潟県中条町の平野に自生地している。植物分布上貴重なものとして、昭和38年3月県天然記念物に指定されている。珍しい平野に咲くミズバショウ、その姿をぜひ確認してみたい。
 
稀な環境で育つ中条のミズバショウ
JR利用の場合は羽越本線中条駅で下車し、ハイヤ−を利用すると良い。マイカ−の場合は国道7号線と海岸の国道345号線から入る。マップに示すように三ヵ所に標示板があるが、小さいので見落さないように注意する。地本集落のはずれ、ハンノキの雑木林がミズバショウ自生地となっている。
この地域は胎内川の扇状地上の湿原で、絶えず伏流水がこんこんと湧きだし、ミズバショウの生育に適した条件をそなえている。周囲を田圃でかこまれた約2hの地域に、一万株以上の群落を作っている。春一番に枯れたヨシの間から白い仏焔包の姿をあらわすと、生命の息吹と自然の不思議を感じる。このミズバショウ群落は3月中旬と開花が早く、越後平野に春をつげる風物詩となっている。また、カシラダカなどの渡り鳥りの囀りがハンノキ林をにぎわすのもこの頃で、桜前線も北上し野も山も春一色に彩られる。
ミズバショウの花後は白い清楚な姿とは一変し、かわいい彼女がこんなにも生命力が逞しかったのかと、呆れるほど葉が大きくなる。やがて湿原はヨシの密藪に覆われると、下床にはセリ、ドクゼリ、カンスゲ、ミズオトギリ、ノウルシなどが繁茂しヨシキリなどの野鳥の天国となる。清らかな湧水にはトゲウオ科のイバラトミヨが生息している。長さ4〜5センチのさかなで雄が水草などの茎に巣を作り、雌を誘導して産卵させる。子供の頃医者鯛と呼んで親しんでいたが、最近は環境汚染で生息地が激減しているので大切にしたい。
桃崎浜には日本海岸砂丘地の海浜植物を代表するハマナス群落があり、ハマナス公園として整備されている。5月から8月にかけて赤いハマナスの花が咲き揃う。その他、ハマニガナ、ハマヒルガオ、ハマエンドウ、セナミスミレ、そしてルリトラノオやハマナデシコのたおやかな姿も見られる。青い日本海と赤い夕日のコントラストを楽しみながら散策するのも良いだろう。
》》》 花マップ紀行「ヤマザクラ」大峰山・橡平
昭和9年に天然記念物に指定された橡平のサクラ樹林は、大峰山のヤマザクラとして名高い。何万年の間に自然交配したこの山のヤマザクラは、数10種の変種に分類されるという。オオヤマザクラ、ヤマザクラ、オクチョウジザクラなど高度によって分布が違う。サクラの観察には双眼鏡が必携だ。
 
日本一小さい山脈を彩るヤマザクラ
日本海と並行する平均標高400メートルの山並が櫛形山脈で、「日本一小さい山脈」として知られている。南北に約13キロ連なる櫛形山脈は中世より山城が築かれ、古くから山岳路が開かれていた。大峰山はその南に位置する主稜にあたる。
JR羽越線金塚駅で下車する。踏切を渡ると国道7号線で、貝屋温泉の看板がある歩道橋を渡る。新金塚小学校を左に田園の一本道を行くと三叉路となり、左折すると山麓の貝屋集落である。集落の入口から右折するのが寺沢林道で、高台に駐車場がある。
マイカー利用の場合でもここで駐車し、桜樹林を周遊するコースを薦める。一本松展望台から貝屋大沢を隔てた対岸の北東斜面一帯が、天然記念物に指定されている「橡平の桜樹林」である。山麓にはオクチヨウジザクラが多く、中腹に淡い白色のヤマザクラ、カスミザクラ、そして紅色のオオヤマザクラと高度によって分布が異なるという。綿菓子のようなヤマザクラに混じって、ブナやイタヤカエデの新緑と鶯色のナラやコナラが春の優雅なハーモニーを奏でている。
橡平一帯の桜樹林はトチやケヤキ、そして、ホオノキなどの高木が多く、お互いに共生して豊かな植相を何万年にも渡って守り育ててきたのである。付近に咲く小低木は地元で柴桜と呼ぶチョウジザクラで普通に見られる。林床にはカタクリに変わってオオバキスミレとナガハシスミレ(テングスミレ)が咲いている。近年建てられた休憩展望舎チェリーヒュッテ大峰からは、日本海に浮かぶ佐渡ガ島と粟島そして、田植えの終わった水田が水鏡のように光っている。三角点のある大峰山頂まで約10分程かかる。登山路には「ここが北緯38です」の看板が立っている。ほどなく分岐点となり、左に櫛形山、右に箱岩峠の案内板がある。いずれのコースを取っても、1度箱岩林道にでる。
この林道周辺にはオオヤマザクラ、カスミザクラの大樹が真近に観察できる。また、欄漫として咲き誇る桜樹と、白く輝く二王子岳とのコントラストが美しい所である。
時間に余裕があったら櫛形山に向かおう。約一時間で法印滝への分岐点に着く。直進すれば櫛形山で、左折すると一ノ沢を下って大沢林道の堰堤に出る。出発した貝屋集落に戻れば、大峰山の桜樹林を周遊するチェリーコースの終点となる。
》》》 花マップ紀行「ハクサンコザクラ」飯豊連峰
緑の山野に雄大な大雪渓が見られ、美しい高山植物が四季を彩る飯豊連峰。東北を代表するこの連峰は、ゆるやかな起伏で山形、新潟、福島の3県にまたがり登山者も多い。原生林の生える重厚な山容が美しい。豊富な残雪は日本海要素と呼ばれる植物群を育み、ハクサンコザクラの大群生地となっている。
 
空に舞上がる大雪渓
飯豊連峰の中で石転び沢大雪渓を登るルートが登山者の人気が最も高い。初心者は夏場でもアイゼンを必要とするが、石転び沢の出合いまでなら日帰り程度の山歩きで、オオサクラソウやハクサンコザクラなどの高山植物を見ることが出来る。
東北の名峰、飯豊連峰の最大の魅力は豊富な雪渓と 高山植物そして静かな山旅であろう。 しかし、アプローチが長く交通機関に恵まれない。唯一、山形県小国口が飯豊連峰の登山基地となっている。JR米坂線小国駅で下車すると、国民宿舎梅花皮荘までJRバスが約一時間で通年運行している。登山シ−ズン中は、終点の飯豊山荘前までバスが行くので利用するが、飯豊山荘からは一般車両乗入れ禁止となっている。
温身平まで約40分程車道を歩くが、ブナの梢に三角形の宝殊山が見えてくると温身平に着く。 温身平の分岐点を右折すると石転び沢ルートである。ここから、飯豊主稜の十文字鞍部と石転び雪渓が望遠できるので確認しておこう。
車道の終点が梅花皮堰堤で、ダムの階段を登ると登山道になる。 梅花皮沢沿いの河岸段丘からは、ブナの樹林帶を行く登山道となる。夏のブナ林は葉が太陽の光を遮り鬱蒼として暗い。早春や秋の華やかさはないが、林床にはギンリョウソウの妖しい姿が見られる。
遭難碑のある地竹原はエゾアジサイが多く、少し時期は遅くなったが、まだ色あせた紫の装飾花を残している。代わりにトリカブトが気品ある紫の花を付けているが、毒草なので触らないように。地竹原を過ぎると対岸から梅花皮ノ滝のある滝沢が合流する。5月中頃までは滝沢の出合いから快適な雪渓歩きが出来るが、夏道は直ぐに高巻きとなる。この高巻きから梅花皮ノ滝の最上部が見える場所がある。
梶川の出合から広く伸びやかな谷となり、漸高すると眼前に雄大な石転び沢の大雪渓が見えてくる。出合いから雪渓登り約3Kmで梅花皮小屋に達するが、広く伸びやかな出合いの雪渓も変化が激しく、巨石の間をくぐる危険な徒渉もあるので良くルートを見極めて渡ろう。
四季折々に変化する石転び沢の出合には多くの花が見られる。雪解けの5月下旬頃からカタクリ、キクザキイチリンソウ、オオバキスミレ、スミレサイシン、サンカヨウ、シラネアオイ、ニリンソウが咲き始める。初夏になると切り立った岩肌に、コシジシモツケソウ、ヒメサユリ、ニッコウキスゲなどの花が目を引く。夏はオオイタドリやミヤマシシウドが背の高さを競い合い、沢筋にはフキユキノシタ、アラシグサ、イワイチョウ、クロクモソウ、モミジカラマツなどの流水を好む植物が繁茂している。
岩陰を捜すとオオサクラソウやハクサンコザクラ、ミヤマキンポウゲなどの人気のある高山植物が見られる。最近、登山者以外の心ない盗掘者が後をたたない。
花も咲かないような、つまらない山にしない為にも皆の目で花を守って行きたい。
往路を戻る花の旅ならば、飯豊山荘から4時間、帰路は3時間みれば十分であろう。
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